税理士法人の広報時代、相続税の無料セミナーを定期的に開催しました。ときには地域雑誌や新聞社とのタイアップで大規模に実施したこともあります。セミナーはいつも好評で、ほぼ満席状態でしたが、案件に繋がることはほぼありませんでした。
一方、セミナー後の個別相談に応じる職員の負担は小さくありません。回を重ねるごとにセミナー参加に後ろ向きになっていく職員が増えていきました。
そんなとき、セミナー講師を務めていた職員から、無料というのをやめてはどうかと相談を受けます。詳しく話を聞くと、個別相談を受けたあともメールや電話で相談してくる方が多くいらっしゃると。どこまでを無料とするか明確にしていなかったことも原因にあります。
セミナーを有料にすることに不安がなかったわけではありません。有料にして参加者は来るだろうかと心配しましたが、それは徒労に終わりました。有料セミナーの参加者数は無料時とほぼ変わらず、さらに受任に繋がる件数が増えたのです。
無料セミナーが悪いということを言いたいのではありません。セミナーを行う目的によって、無料とするか有料とするか戦略的に考える必要があると思います。前職の税理士法人は相続の実績も多く、無料セミナーを多数開催していたので、有料セミナーの集客ができたということもいえます。まずは事務所を知ってもらうことを目的として無料セミナーを開催し、さらに一歩踏み込んだ内容を有料で実施するなど、段階を踏んだ施策が必要でしょう。
無料セミナーを実施するときには、訴求したいサービスを事前に用意し、ここから先はこのサービスを利用してほしいと案内できるのがベストです。相談は無料だと認識しているお客さんは想像以上に多くいます。相談によって時間や気力を奪われないよう、事前に線引きをしておくのも大切ですね。